異界探偵と称する者はえてしておかしな趣向に凝ることがあるようだ。異界の謎解きが何の収入にもならんのにしてきたのと同様に、おそらく誰のためにもなるまいに、ここにわが脳の遺した記録として留めておきたく思う。書いていることは私の死の間際の事なので、見てもらっても絶望、参考になることなどもきっとあるまいと思うのに書いてしまう心が自分でもよくわからないでいる。
5月11日午前6時25分に左足甲のこむら返りの激痛で起きた。これはまた左足の電解質成分不足によると知っている私は買い置きのポカリスエットを痛みの中をいくぶんか歩き取ってきて400ccほどを一気飲みした。立ちあがった姿勢ゆえ1分程度で足の痛みはなくなった。
医者からもらって服用していた利尿剤はよく効き、夜もまともに眠れぬほどに利尿起きしていたが、7時半頃もそのゆえだった。400ccほどがこれまた一気に出た。愚かな医師は、下肢の腫れという誰が見ても以上とわかることの解決を何よりも治療の優先にするらしく、腫れたら水出しするそのことのみに腐心する。持病の心不全に負担がかかるとの理由付けだ。なるほど治療も優先度をどうつけるかなのだ。だがその一方で行き過ぎのことがあっても忘れ去りたがるらしい。こんな苦情を言ったことがあるが体よく無視だった。ほら今打ち込み始めた7時39分にまた次の尿意の200CCほどをこき下ろさねばならなくなった。ではまた電解質の補給をする。そんな繰り返しの人生がいくら闘病、死ぬるまでの足掻きであろうともやらねばならぬようにこの世は図っているかのようだ。
私には20歳の時に受けたある見立てのよい拝み屋さんの託宣がある。この私は蓬莱島の最上の松に泊まる鶴、一生食いはぐれることはないとのことだ。
鶴であることはすでに何度もパートナーたる亀とのタイアップにより、不思議が実現したことは、鶴と亀が統べるということの表れであると新神話にも書いてきた。
食いはぐれることは確かに一度もなかった。よほど体調を崩した時にはそうしたかもしれないが、記憶にはない。ところが今はどうだ。貧窮や食料が買えないために食べられないのではなく、どんな食事も思うだけで嘔吐しそうになって食べられないのだ。こんなケースもあるとは思いもしなかったが、食いはぐれることは自分の意志として生じているのだ。果物もダメなのだ。
私は最近、ソリティアを使って占いをするようになった。身近なことを占うに、とてもよく当たると実感していた。
私は自分がいつ死ぬのか、現状の体調不良を考えて、占ってみることにした。
特に症状のひどい日には、二、三日後までに死ぬのかという占い方もした。そして、一か月後までにか、三か月後までにか、半年以後かと次第に範囲を広げて占ってみるようになった。
ところが一度も完解がない。おかしい、こんなことがあるはずはないと、とうとう、今現在すでに死んでいるのかと質問してみたところ、そのとき初めて完解した。そんな馬鹿なと、何度か試したら、おおかたが完解だった。
ほうら今度は便意をいきなりもよおしてきたぞ。本気モードになってくるということは、死にながらも生きるということか。
はははははは。
私はすでに死んでいる。では私は生きているふうに装っているゾンビということか。そうだろう。すでに私は古事記神話の「黄泉の国」にいてそこは死体置き場の世界なのだから、そこで生きているように見えるのはゾンビであり、その生きざまは上の者ほど強欲でガツガツしているゾンビ剝き出しの状態、そうなのだ、政治家やらそれをコントロールするもっと権力を持った者たちの身の毛もよだつおぞましい世界なのだ。
そのようなゾンビもやがて朽ちて果てるときがきてしまったのか。ゾンビは決して不死ではないのだろう。私はその最後までを見届けてそれをこの脳の最後の記憶領域に刻み込んで去ろう。
どこに去る?
さあな、ハイアーセルフがあてがってくれるだろう。最近、疎遠になっていたが、こちらからイメージして何とか渡りをつけたつもりだ。できれば、ハイアーセルフの右目にむでも組み込んでもらい、あの天帝様に会いに行く夢の続きを見せてもらいたい。だって私はそのためにこんな世界に居て何が起きてどこに正義があって、どれほどの悪事が横行しているか調査してきたではないか。知っていること、知るに及んだこと、まだ未解決ならその端緒を知得したことを天帝様はじめ皆神様に周知して最後の審判の叩き台にしてもらわねばならない。そのためにここまでやってきたのだ。
私はもはやこの世の食べ物という食べ物が口に入らぬ。想像しただけで嘔吐しそうになる。ゲエーッ。
どうしたらそれでも生きられる?
ジュースなどの流動食ならまだ大丈夫だ。そうだ思い出した。カロリーメイトだ。電解質のポカリスエットは素晴らしいものだったが、同じ大塚製薬の製品ではないか。人間に必要な成分を極めた感のある会社の心は見上げたものがある。そう、カロリーメイトも固型品では口に入らぬ。買いに出なくてはならない。昔、飲んだことのある同品は決して美味いとは思えなかったが、私の出勤前の朝食になったときがしばらくあった。
同製品にはゼリータイプというのもあるらしい。液状タイプがなければそれも流動食だから候補にはなる。
さあ出かけよう。街に出かけて、最後の食事を買ってこよう。
この話はもうすでに買ってきた後で書いているから、そこまではまだ生きていることとして思ってもらいたい。
そう、5月11日午前10時前に車庫から車を出して買いに出かけたのだ。
しばらく走ると、ああまただ、よく晴れた日にこないだ脱輪事故を起こした時のように、外界すべてが光度を増し、実体物と空の境界が次第にわからなくなっていった。行きがけはまだ大丈夫だったが、帰りはもうたいへんだった。
最初についたのはZAGZAGというドラッグストア。そこになければ別の薬局に行く手はず。
しかしそこは品ぞろえ良く、係の人にその棚を訊いただけですぐさま分かった。
みな揃っていた。ジュースタイプ4個セットを三種類とゼリータイプ一個ずつを三種類購入した。クレカが使えてありがたかった。買った外の駐車場でゼリータイプ一個を食した。味はいいことはないがまあ完食できた。これが昼食となる。
同時に買ったアイスクリームはまた別の駐車場に入って食べた。
まだ買物はしたかったが、次第に明るさを増し、ぎらつき始めたので帰ることにした。かなり外界は不鮮明になっていた。
通い慣れた道だったが、信号がよく見えない。下手したら交差点で他車と。いやそのような懸念すべき場所はすべてクリアしてあとは帰路の田舎道となった。途中の郵便局でレターパックを一枚購入。叔母あてに託すべき品を送るためのものだ。
郵便局を少し過ぎた道の左に停めて歩いて向かうに、すでに全身は限界であるかのように、局に着いてから倒れてもいいぞのモードになっていた。
だが、そんなことはできない。車をこんなところに置いて救急車などで搬送された先がどうなるか思い遣られて、何とか家まで帰ろうとした。
山道に入ればやはり外界はやや鮮明になる。やっと見やすくなった。ゾンビもそうだが、悪霊たちが好む場所が暗がりである理由がわかった。お天道さんの明るい日差しの下ではものが見えないのだ。よくものが見える場所なればこそ、そこに居着きたがるのだ。森の暗がりから闇夜の世界に至るまでがようやく存在できる領域足るのだ。
そこではてと思うのは、私が実際に死んだらどこに行くのだろう。無理してお天道さんに会いに行くようなことにならないか心配になる。私のすべきことのひとつに太陽のイベントがあるのだが、これは太陽に行っての話になる。暗がりしかあきまへんでは話にならない。
まあそれもハイアーセルフがやってくれるのだろうが、私が耐えられなければそこで仕事から降ろされるしかなかろう。仕方ない。生前で修行してこなかった報いとなるだろう。
ああいま、黒猫が一匹、私の足元をかすめ通って行った。何しに来た。途中にあるドライフードに目もくれず、さあっと走り去った。そうか、彼らは私を観察していて、すでに私の死期を感知しているのだろう。たくさんいる猫仲間たちに知らせに行ったに違いない。昨日今日と、彼らの姿と行動が目立たないのだ。監視カメラにもあまり写っている姿がない。
そろそろ、この餌場も後にせねばならないと思っている者もきっといる。そうやって彼らは同族の数を維持してきた。
こんな山奥でだからたいへんだっただろう。
私もこの冬を乗り切ったなら、彼らも自助努力して野ネズミなどを捕獲できるようになるという見込みでやってきた。それが如実になるのだ。
ああ腹が痛い。さっき便意を催しその急ぎの有様に風呂場に駆け込み、ドバっと尿のような下痢便をしてきたところだ。またやってきそうだ。
早いとこ、今までの分だけでも書き上げて、周知させておこう。
15時50分頃か、またドバッだ。洗浄した後、このまま風呂に入ろうと思い、1時間ほど身体を温めるために入浴した。お湯は気持ちいいものだが、腹の痛みは胃のあたりとくれば、心臓であるに違いない。内臓全体に不調をきたす痛みともなる。
それからベッドに半分起坐で横になっていると眠ってしまった。
今は17時を回り、毎日餌ねだりにやってくる厚かましい白黒斑の雄の大型猫に長ったらしい餌ねだりのお相手をしてやったところだ。我が家の最古参の猫となった白猫のトンは私と同様の憔悴気味の身体で見回りだけは頑張っているが大型猫の厚かましさをどうにもできるものではない。後のことは君らに任せるしかないが、無理をせず自分のことだけを優先して生きていってほしい。
18時に私は自分の夕食をとることに。
カロリーメイトのライム&グレープフルーツ味のゼリーが目の前にある。ウゲーッ。
この調子だから、流動食でなくてはならないが、口の中を通る感触次第だ。
辛いがいただきます。
うん。なかなかいい味。しかし缶入りの流体には適わないだろう。ああまたそうこうしていたら、便意のほうがまた。
まさにそうだった。正露丸でそっちの道を封じようとしたがなかなかうまくいくものではない。
継続して飲めるかどうか。苦労が要るがほんとうは簡単なんだろう。
18時32分に完食した。これで夕食後の薬が飲める。
そもそもはこれらの薬の副作用が嵩じて様々な体のトラブルが出ているのだが、医師はそれには目を向けることがないかのようだった。
明日からは缶入りの流体カロリーメイトが4日分続くことになる。
今回は人が死ぬるまでを実演しようとこの語り場を設けた。どこかで記録が途絶えていれば、そのあたりでこの世を去ったと思ってもらいたい。後でまた書き込むようなことはそれ以後あるまいて。
ポカリスエットで夕食後の薬を飲みほした。
5月12日
夜中のうちに10回くらい尿意を催し起きたことか。
いつのまにか猫たちが炬燵の中の私の足先あたりに戻っていて少なくとも2匹が共に寝てる感じがしていた。あえて調べることはしない。
不思議なことに開き直ったせいか、毎回簡単に眠りに就け、尿意が邪魔するまで熟睡した感じがする。
朝として起きたのは5月12日午前7時。部屋の中を掃除してから体重を測ればなんと62.5Kg。ここ一年以上で一番軽い値が出ていた。こんなに低いときはこむら返りになるはずなのに、快調な気がした。
その後、朝食のカロリーメイトのアップル味ゼリーを食べた。ゼリータイプの中では一番うまいかな。そうして朝食後の薬だが、もう十分に利尿効果が得られていたため、利尿作用のきついサムスカ、フロセミドそれぞれ2錠ずつあるうちの1錠ずつを抜いて規定の数すべて飲み干した。
もう入院患者のようなものだ。このベッドに背もたれを作って座ればパソコンを見ながらの体制になる。それを取り去っていつでも眠れるのだ。
食欲は依然として湧いてこない。もういいんだ。カロリーメイトとお茶とおいしいと思える清涼飲料水や電解水、そして自作のかき氷を食べて生きていこう。たぶんこれが念願もしていないゾンビ生活というものだろう。古事記神話に黄泉の国あり。そこに住まうゾンビとは相成りにけり。やがて黄泉の国は人口削減の末、滅亡して消滅することだろう。さあそのあと、自我意識はどうなるんだろうな。ハイアーセルフが前もそうであったように、私を任意の場所に置いたように、またも私はどこかで目を醒ますんだろうかな。
まだ定かには見たことのない高位自己存在としての父よ。
私はもう嫌だ嫌だと言ってるから、腫れものに触るようにどこかに置いておくつもりかと思ったりする。
さあて、朝の情報を仕入れに行こうと、抹茶ラテをスタンバイさせてパソコンを起動した。
申し訳ない。考えることはたくさんあって、たくさんのことに解釈を施して記憶したつもりだった。この時間になってまとめて書こうとすると、何一つ思い出せない。頭への血の巡りが悪くてそうなっていることはわかる。最高血圧が77とかでは危険なほどだろう。肩の凝りもあった。心不全の心臓に負担をかけまいとして今度は脳梗塞でも狙ってたりしたら、医療も両刃の剣でしかない危険品となろう。
昼はカロリーメイトの缶入り液状タイプのフルーツ味だったが、酸味がきつくてまずかった。こんなふうにして、好みのカロリーメイト選びもしている。ゼリータイプのアップル味はOKだった。
そのあと、便意を催したのでおむつ取り換えとともに入浴して体を温めることにした。入浴中もいろいろ考えたが、後でまとめ書きしようとしても、何一つ思い出せない。ただ、体温が上がったので、午後2時のおやつは小豆入り、練乳、粉茶、松葉茶入りのかき氷となった。カロリーメイト以外の栄養は小豆からとる。
その後、部屋の中にいても外界がぎらつき始めた。瞳孔が開きだしたのだろう。やがて外界が暗くなり見えなくなりそうになって、危険を察知して横になることにした。脳貧血だ。薬害でもあるのに、また元々低血圧な私なのに、血圧を下げる一方の投薬の一度に摂取するのは、利尿薬3種類、そこに新薬というエンレスト、これによって低血圧は決定的となった。
やや眠ったのはいいが、胃の残りが逆流して気管に入り、またも油断の咳き込みとなった。医療によって殺されるのも、油断によって死ぬのも、ここはすでに戦場だからだろう。日本人はいいな。性善説を大事にし、お花畑にいることを自認し楽しめている。私も日本人のはずだが、子供の時からいじめられたから、なにもかもに疑心を持っていた。損な役回りだった。社会に出てからようやく文書にして遺すことを知り、そうすることでやっと納得できるようになった。
解釈するんだ。自分なりの解釈だ。他人がいやそれは違うと言おうとも、鉄壁の解釈は独自独尊のものとなり、それが次の別のものへの解釈への足掛かりになるんだ。そうしてできた解釈の連環の輪は強固なリングとなって、破壊不可能なものとなり、同時に頑固な爺さんを生み出すのさ。
今ここに記入しているのは、17時になって夕食用のカロリーメイトのカフェオーレ味を飲んでいるときだ。缶入り液状タイプでは一番うまいように思う。
さあ、書くべき話をすべて忘れてしまったのも油断だ。今後なるべく書き込める体制をしっかりさせて、無駄のないように図りたい。時刻は18時になった。