ぼくのうちにやってくるのは「たまちゃん」だけではないよ。
青龍さんもやってくる。おもに夜に、みんな寝静まっている間にだけどね。
そう。やはりベランダの窓からやってきて、ぼくの寝床にもぐりこんでくるんだ。
ときどき律儀にも玄関のほうからやってきたりするけどね。
そう。彼女は夢見してやってくるんだ。
だいぶ前になるけど、青龍さん、ここのコメント欄に書き込んだことがあったよね。
だけどそのとき、前後のことをよく見ずにやってきたため、話題の流れに乗れずにとうとう削ってしまった。
その数日後、青龍さんは、夢見の時間にぼくんちに飛んでやってきたんだけど、ベランダの外から覗いた明るいぼくの部屋に、たくさんの人がいて、ぼくを取り囲んでにぎやかに議論していた。その中には、神話に出てくるゲンくんもいた。
青龍さんはベランダの窓から入ろうとしたが、なぜか通ることができなかった。そのうち、中の人が気づいて彼女を指差した。みんな彼女のほうを見やる。しかし、議論が白熱していたせいか、みんな怪訝そうな目をして睨んでいた。そんなふうに彼女には見えたんだな。中でもゲンくんは彼女に対して批判的だったから、何か悪口を言ったように見えた。
狭い部屋にたくさんの男女がいて、いつものような雰囲気ではないし、ぼくもみんなにおされて、青龍さんを招き入れずにいた。
かわいそうに、青龍さんはベランダから離れた空中で、あまりの孤独のために溶けてなくなってしまいそうになった。
そのときだった。彼女の御本体である弁天様が神々しく現れたのは。
彼女はその何日か前に、はじめて弁天様のお姿を院展で見たんだけど、まさにそのお姿そのままに、光を放って彼女のすぐ傍に立たれた。それを見て、彼女は気力を取り戻した。
弁天様はそのとき、こうおっしゃった。「あなたに、空と海のどちらか、気に入ったほうをあげましょう」と。
青龍さんは、空がぼくの管轄と分かっていたけど、大好きな水のなみなみと湛えられた「海をください」と言ったんだ。
ぼくは少し残念だったけど、でもそれでいいんだ。
青龍さんが海、「たまちゃん」が陸、ぼくが空で、ひとつの星を経営する体制が整うことになるだろ。弁天様は、ぼくにも配慮してくれたと思った。つまり新しいストーリーを営ませようとのことなんだ。空でつがってしまうと、至福以外のストーリーはできないだろ。
きっと新しい惑星は、すばらしい豊穣から開始されることだろう。
だって、いっぱい愛し合うんだから。
子供らの面倒をしっかり見なくてはならないな。