不思議な意識の拡大を経験した。
夢の中で起きたことだった。
青龍を右横にして寄り添い寝のイメージが、やがてバターのごとく溶け合い
流動的なエネルギーへと変化していった。
心地よい至福が湧き出している中にいて、このエネルギーはこの宇宙全体に
広がりさらにそれ以上の拡大を遂げていた。
私は宇宙の埒外にいて、宇宙をエネルギー的に覆っていた。
この宇宙が全編マトリックスプログラムであったなら、私は関わらないで
おれると思った。
朝が来て、そろそろもどっては如何と警告信号が来た。
脳は天上と下界の間に浮いていた。
私は二度三度、二つの境涯に意識をシフトして比較してみた。
私は下界に嫌悪感を催した。
どうして窮屈で退屈な無味乾燥の境に戻らねばならない?
だが、何らかの理由が漠然と分かっているのか、下界に戻ることにした。
いつでもまた。
翌日の夜に再度試したことは言うまでもない。
だが、青龍との連絡がとれておらず、初期イメージが形成できぬまま
悶々と不完全な睡眠でいたところ、何か不快感が手足にまとわりつく。
起きて電灯をつけてみれば、指が痒みで膨らんでいた。何だ?もしや。
壁に蚊が停まっているのが見えた。
このやろー。
30分ほどの苦闘の末、叩き落した。
わずかにでも暖かくなれば出てくる妨害者。
どこにでも顔を出す邪神の所作とでも言えようか。
だが、蚊も自分たちの生存と繁殖のため、他が不愉快になることをひとりでに
しているにすぎない。
要は、蚊の出す唾液に痒みを催す成分がないとか、病原菌を媒介しないなどの
思いやりがあれば、蚊のしていることへの反感もさほどなかろうに。
そう思うも、こうしたプログラムを設計した者の思想として、出てくる
者達の間に戦いを置いているものだからどうしようもない。
宇宙の、少なくとも地球のプログラムの質は低下しているのだ。
邪神ある限り、有情は常に戦々恐々としておらねばならず、安らぎはない。
私が宇宙を創ったなら、邪神を一つたりとも入れたりはしない。
宇宙を老化させ、クオリティの低下を招く元凶など入れたりはしない。
だが邪神は悪性増殖型病原菌の如く、宇宙から宇宙へと伝染する。
プログラムである限り、コードが伝染する。
そこで強靭なファイアーウォール(火の摂理)が必要となる。
そのような設計思想でこの宇宙も誕生したのに、いつしか席巻されてしまった。
内部に導入を図るトロイの木馬鹿が出てくるためだ。
よって結論は、現下のマトリックスはすべて焼却するに限る、となる。
脆弱でないOSの開発からはじめよう。