読者の篤志家の方から、お題をふたついただきました。
まず、前回の記事の内容に関して、「幻術の縛りを解くにはどうすればいいのか」というご質問がありました。
そのためには、その縛りが幻術によるものという認識が必要になります。
解こうとしている方が、これは幻術なんかじゃない、現実だと確信しておられたり、これは誰にも解けない難物だと思っておられるようなら、解くことはとても困難です。
そしてまず、解こうというご自身の意志がなくてはなりません。
その意志がなければ、対策が思い浮かぶことはありませんから、次のアクションが起こせません。となれば、いつまでも縛り付けられたままとなる道理ですね。
縛りの具体例として、ご質問者のご希望、ご趣味もあり、亀甲縛りというものの例を挙げましょう。
はじめは、気安く縛ってもらったとしましょう。ところが、そのまま放置状態になっていれば、紐が汗や何やらを吸い取って、乾燥とともに収縮して、縛りがどんどんきつくなります。
気が付けば、ああ、早いとこ脱け出す対処をしておれば、自力でもできただろうに、もうこれは恥部に食いこむわ、身動きとれないわで、気持ちの良さを通りこして、激ヤバ感が漂い始めます。
亀甲縛り師も来なければ、誰も来ない。このまま何日もこの状態だとどうなるのだろう。
ようやく、被術者は焦り始めるわけです。抜け出なきゃいけないと。
その必死感が出てくると、ようやく対策のひとつも思い浮かぶようになります。
あそこの裁縫箱の中にあるハサミを使って、紐を切ればいい。
しかし、紐はそれ専用の紐で、とても高価。切るに忍びない。まて、ほかに何かいい手はないか。
思案してもたもたして、半日が過ぎます。
ようやく決断。ところが、裁縫箱からハサミを出そうとしても、両腕が後ろ手になっているため、簡単に開くものではありません。
そして、ハサミをどうやって手に持ちかえて紐に当てるか、その算段もつきません。
そうしているうちに、疲れが出て眠ってしまいます。そんなことを何日も繰り返した後、ようやく発見されるのですが、そのときは脱水症状で、あられもない姿のまま病院に。
まあ、命が助かってよかったですね。
後でその界隈では、こんな人もおるんやねえ、しかも男の人よ、変態よねえ、などという噂が七十五日間、立ち籠めたそうです。
しかし、よく言ったもので、76日目には判で押したようにして、噂はどこへやら。これも幻術の性質なのですが、巷が知るよしもありません。
そしてまた、別の階で同じような事故があったりします。
では、どうやって、幻術の縛りから脱け出すかの解答です。それは焦る必要はなくとも、できるだけ脱け出せるうちに、早い対処をとるということに尽きます。
縛りのことをよく知った人に聞くことも大事で、決してやましい気持ちや、みっともないといった気持ちを持たないこと。
騙しの幻術とわかれば、そこに留まり続けることは避けるべきです。幻術は、甘い罠の匂いがします。それを甘美な蜜の味に間違う人の多いこと。
その実は、肥しの匂いである場合が多いのです。別名、田舎の香水と言いますね。
そして、後で気が付けば、うんこ溜まりの中に居た自分だったと知るわけです。
そして、一番簡単なのは、最初から亀甲縛り仲間などに入らないことです。
いかにご本人の趣味嗜好が招いたとはいえ、いつしか類は友を呼ぶの譬え通り、引き寄せ、引き寄せられするものです。
彼らはその道に長けてますから、深化した技をたくさん知っていて、気が向いたらいくつだって教えてくれます。
下半身の快楽はとどまることを知らず、その道を極めてもうビョーキというところまで行きついて、ようやく達観するわけです。その方を極道とか言いますね。
たいがい、着流しスタイルで、いぶし銀のような風貌をしていて、不治の病を抱えていたりします。そしてその道において、尊崇されていたりします。
亀甲縛りの銀次郎兄いとか言われて。そして、数年後にはご他界あそばされてるわけです。
それも道。人生いろいろ、仕事もいろいろ、結末もいろいろ。
だから、もっと基本的には、自ら見極める力を持つことです。そのためには、たえず疑問を涌かせる態度を心の隅に置いておくといいでしょう。
幻術はとても巧みに取り入ろうとしてきます。射幸心をあおり、それに乗ってきたら、ビギナーズラックを仕掛けて、生むが易しと思わせます。
味をしめた人は、あのときの感覚が忘れられず、またやれるかなと、二度三度。ところがもうちょっとのところでうまくいきません。
ハードルが高くなっているかのようにして、誘いをかけてきて、四度五度とプレイさせます。そこでプイとやめたら正解。
しかし、六度目にはまた勝って、そうか、こういうコツがあったんだと思い直し、七度八度と突っ込んでいってしまいます。
幻術は、押していけば引き、引いてやれば押してくるという、おかしな性質を醸しながら、人々に自信喪失の種を仕込みます。
幻術に囚われる期間が長すぎると、魂は腐ってしまいます。
それを魂の進化などとほざいている、幻術師側の宣教師の甘言を、信じるも信じないもあなた次第。
人は外界に神や師匠を求めます。しかし、彼は外界が幻術であることを知らないのです。幻術が人に対してホンモノをくれたことがありますか。
むろん、ホンモノをくれることはあります。それは幻術の中に一定の作用機序ルールを創った場合です。幻術はそのルールに従って、ホンモノを提供してくれます。
その作用機序ルールのことを魔法といいます。
しかし、人はそのようなもののあることを知りませんし、作用機序の創り方も知りませんから、ホンモノに遭うこともないのです。
人は繋がるべきところを知らずにいます。そのように誘導されてきたのです。いまあなたは、何のために幻術のバーチャルゴーグルを着けられているのですか。
あなたを外界に連れ出すためにです。そして、ホンモノに会わせないためにです。そして、魂を堕落させるためにです。
しかし、一定のルール下において、幻術はあなたの真の要求を満たすように働く召使いにもなります。
真の幻術使いのあなたのことを、白魔術の魔法使いと言い、創造主と言うのです。
まあいちおう、このような解答になります。
さて、質問の第二問めですが、飯屋の看板メニューは何なのかでしたね。
そうですね、多彩な料理があるのですが、中でもお勧めは、キルギスタン風濃蜜乳入りボルシチで、一帯一路の味わいとされておりますね。
まあ、こんなところでしょうか。
はい、また次の質問を募集します。どんどん奮ってご応募ください。異界の名探偵OKUNDがお答えします。