哀愁の猫物語

物語とはタイトルしましたが、実話ですからね。
うちの三猫も不思議な存在ですが、食事をねだりにくる他所猫(この場合は二匹)も不思議なものです。
この都合五匹は、私の寝ているときの夢の中に登場してきているのです。そして、他所猫の夢はいま正夢として現在進行しています。
うちの三猫が白虎一家なら、他所猫軍団はみな眼光鋭い伏儀神農一家といったところ。いずれも神格的化身かも知れないため、厚くもてなしてやろうと思っているのですが、筋は通さねばなりません。他所猫は元飼い主の残酷に遭った放置猫だったかもしれませんが、A宅が餌付けしていたので、A宅の所有であり、うちの猫を威嚇してひどい目に遭わせていたので、拙宅の敷地にも入れるわけにいきません。
いちどリーダー格の風格ある切れ長の目をした茶猫が、私と対峙したことがあって、このとき私はすげなくあっちへ行けと手で合図したのです。これは彼らに対する意思表示です。リーダー格猫はすごすごと去っていきました。
それ以後、長老格猫はじめリーダー格猫たちは姿を消し、下っ端であろう猫たちがいくつかのグループを作って独立しているような感じになりました。A宅が処分しだしたのかも知れません。当然、えさもやらなくなったと。
そのグループのひとつが銀猫(お銀:たまろの母猫)と息子の黒猫。これも黒猫の姿が消えて、お銀だけが拙宅の納屋を棲家にしたいためか、一日に何度も侵入を繰り返しておりました。
おそらくまたお産しようとのことなんでしょう。が、それはこちらが困ります。ウーが妊娠中で、侵入されただけで気が立っておりますから、精神的にも落ち着いてもらわねば。そこで、外から直接入れる侵入路を塞いで、納屋の屋上からしか入れなくしたのです。すると、うちの猫たちが納屋を昼間だけ寝るのに使うようになりました。外敵が頻繁に侵入していたため、警戒してよう使えないでいたのです。ありがたいことに、この暑い夏を人工の温度調節なしに過ごしてくれるようになりました。もしかしたらウーは、広い納屋の中でお産するかも知れません。
もうひとつのグループが、夢に帰順の意を表してきたボクサー猫と三毛猫です。こちらはなかなかたいへんです。
夢でコミュニケーションがとれたと思ったのでしょうか、その日を境に、現実でも擦り寄りの姿勢を見せ始めたのです。それまでは何度も、うちの猫と喧嘩してギャーギャーやるたびに、私は棒切れや石つぶて、さらには蹴飛ばしまで追っ払っていたのでしたが、いささか私に仏心が生まれた隙を衝かれたのかも知れません。特にボクサー猫のおこもさん的おねだりに、残飯にプラスアルファしてえさ出しをするようになったのです。
うちのオス猫たちは、これを見て、他所猫の態度が変わるかと思ったに違いないです。それ以来、他所猫の傍にいる機会が増えましたから。
が、彼らが大人しいのは腹を減らしているときだけのこと。お腹がふくれて元気が出た頃に、仲間意識を持ったうちの二匹を襲いましたから。その様子を私は見ていて、襲った直後に、因果を言い含めるため、以前のように追い回して、お互いの関係としての一線というものを思い知らせているようなことです。
しかし、このボクサー猫と三毛猫の連携にはすばらしいものがあります。積極的におこもさん作業と哀れなパフォーマンスを演じるのはボクサー猫。腹はペコポン。毛並みは乱れ、尻尾のあたりに皮膚の破れたおできがあって、抜け毛が相当。それがうちの敷地に近いところの道端にうつぶせに横たわっていれば、たまに通る車の人の目にもついて、どこの飼い主の残酷に遭っているのだという噂にもなるでしょう。最近は昼間の道路の真ん中に横たわっていたりと、演技も堂に入っています。
猫も同情を買う演技をするんです。私はそれを知ると逆にそっぽ向くんですが、このたびは少し話が複雑です。
私がA宅との中間あたりにえさを持っていって置いてやると、まずボクサー猫が「にゃーにゃにゃー(おありがとうごぜえやす)」と言って食べようとするも、私が去ってすぐに三毛猫がどこからか現れて、二人で食べているのです。三毛猫のほうは、外交に長けていないのでしょう。ボクサー猫が体面を捨てて、殴られるやも蹴られるやも知れない中で、身体を張ってがんばっているのです。この二人は、枯れススキ夫婦なのでしょう。えさも少し増量するようなことになりました。
おそらく、お銀も飼い主を求めているのでしょう。しかし、たまろを産んだときもそうでしたが、半分野生猫です。人影に逃げ出すようでは、飼うには適しません。もし、たまろのときにそのまま親子とも居ついていたなら、私は他人から猫をもらうこともなかったのです。
今度もまたお産したかったのかも知れませんが、今は無理。無人の館はいっぱいあるので、そっちのほうでよろしくとテレパシーを送っときました。

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