忘八の終の棲家や雪の原

北海道は生きることを模索し創造する場。そんな思いで住居作りを計画しましたが、行政の壁は厚く、寒くなるに従い気も萎えてしまうものです。そんなとき手っ取り早く、ついふらふらと問い合わせた住居付き土地を見に行くこととなり、信州への旅となりました。
行ってみると、いろいろと符合する場所であることが分かってきました。
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場所は信濃町黒姫高原。しかし現地に入ってみて、黒姫山よりも戸隠山の域内であるらしかった。
国道からそう遠くなく黒姫高原に入っていけました。旧民家の立ち並ぶ先に、別荘地的様子が現れてきて、その中にC.W.ニコルさんのログハウスもありました。
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さらになだらかな坂道を上のほうに入っていくわけですが、もうあたりは牧場であり、浅く降雪を被って広がっていました。そして目的地へ。白樺がまばらに植わる土地に、古くなったトレーラーハウスがぽつんとひとつ置いてありました。
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左手に広がるのは牧場です。100mくらい隔てたところに柵があって、その向こうに牛(ホルスタイン)が十頭ばかり、のどかに雪の間に漏れ出た牧草を食べていました。その向こうの山は何? 霊仙寺山? 黒姫山と戸隠山は大きく、見晴らせませんでした。
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その地は、もし永住するなら、何ヶ月かは豪雪の中に閉ざされることになるでしょう。ハウスの高さほどの積雪もありえます。車はストップ。除雪車もよほどの要請でもしない限りないでしょう。
仙人としての生活にはとてもいいでしょう。少し下りればいくらも民家はありますが、目の前が牧場で施設がぽつんとあるだけとなら、森の奥に住む仙人としての立場に間違いはありません。少し先は行き止まりで、まさに誰よりも山の高みに陣取った感があります。
戸隠にはふたつの意味で縁があると思います。ふたつとも、かわいそうな話が元になっており、私にすれば供養の思いで臨むことになるはずです。つまり、ここに定住するとは、一日が供養に始まり供養に終わる生活をするという意味を持つかも。誰か居を共にしてくれるなら、僧侶の気持ちでどうぞ。ちょうど象が墓場を探して行き当たり、そこで骨を晒すべく覚悟して臨むようなことと思います。親戚も不要。未来も不要。忘八者に成り切ってそこにあるといった。
もう一つは北海道。これは先の未来を切り開くための場。縁者をみんな生き延びさせたいがための場。
信州はすべてを諦めた終の棲家としての場です。ふた冬ほど乗り切って骨になればいいの心です。