夜明けの旅烏

どこから来たか分からない。
どこへ去るかも分からない。
放楽に生まれ放楽に生きて放楽に去っていく。
手掛かりの路傍に置かれた魔方陣。
意味するところに従い、どんな役柄でもこなす隠密。
ご公儀の仕事がひとまず終われば、結果を見守るのみ。
ふっと一服する間がとれたようなものだが、関わりもとれたようなもの。
そのとき隠密剣士は、少しも後を振り返らず、
馬を下りて三度笠に身を包んで、明日を風任せの旅烏。
人呼んで夜明けの旅烏とは、あっしのことでござんす。
八重歯のあわさいに楊枝をくわえれば、ぴったりなんでさあ。
なに? うまくいった? そうですかい。それはよござんした。
しかし、もうこのあっしには、関わりのないことでござんすよ。